どんな団体?
障がいのある子たちが
笑顔になれる居場所であり、
学び場としてあり続るサッカースクール
3つの課題感
私たち「ピジョン」は活動を始めてから、3つの課題感を持ちました。
1.居場所と経験の不足
「本当は、サッカーじゃなくても良かったんです」
ピジョン設立から一年が経った頃、ある生徒のお母さんがこう語りました。 障がいのある子どもの習い事としては、水泳や太鼓などの個人競技が一般的です。 しかし、彼女はお子さんが他者と関わりながら成長することを願い、地域のクラブチームを探していました。 ところが、野球でもテニスでも、ダウン症などの知的障がい、自閉症や多動症(ADHD)などの発達障がい、および脳性まひなどの身体障害のある子どもを受け入れるチームはなかなか見つかりません。 サッカーチームも数多く存在するものの、そのようなチームは当時ほとんどありませんでした。 つまり、スポーツ種目を選ぶ選択肢がなく、障がいのある子どもたちが経験を積む機会が圧倒的に不足していたのです。
さらに、行政が障がいのある子ども向けにイベントを開催することもありますが、それらは年に1、2回程度に過ぎません。 中には、時間をかけなければ物事が定着しない子どももいます。 そのため、継続的に経験を積む機会や、安心して過ごせる居場所がもっと必要なのです。
「居場所があるだけでも十分なんです」
親御さんは、お子さんを体験会に連れてきたときのエピソードを語ってくれました。 「普段、(うちの子は)大勢の人の中に入ることができず、すぐに帰りたがります。 そして『もう行きたくない』と言って、行かなくなってしまいます。 でも、ここでは『たまたま』居ることができました。 体験のときはただ佇んでいただけですが、居られる場所があるだけでも十分だと思いました。」 この話を聞き、私たちは知的障がいや発達障がいのある子どもたちが安心して過ごせる居場所がいかに限られているかを痛感しました。
2.自立と就職への道のり
「私たちがいなくなったら——」
彼女はさらに話を続けました。 「その後、何度か活動に参加するうちに、息子は少しずつボールに触れ、人とも関わるようになりました。次第に彼は私に『サッカーはいつ?』と尋ねたり、『サッカーをしに行くんだよ』と嬉しそうに先生に伝えるようにもなりました。本当に感謝しています。 でも、もう一つ、無理だとわかっていますがお願いがあります。 私たちがいる間はこの子をサポートできます。 しかし、私たちがいなくなったら、この子を支えてくれる人がいなくなってしまいます。 だから、この子が自立できるようにしてほしいのです。」
「障がいを持つ人の離職率は30〜50%」
親にとって、子どもの自立は切実な課題です。しかし残念ながら、知的障がいや発達障がいのある子どもが大人になり、せっかく就職しても「人間関係がうまくいかない」「働く意欲や体力が続かない」「作業が合わない・適応できない」などの理由で、すぐに離職してしまうケースが多々あります。 実際に厚生労働省の調査(※)によれば、就職から1年以内の離職率が全国平均で15%であるのに対し、障がいを持つ人たちの離職率は30〜50%と高い数字となっています。 そのため、子どものころから社会性や自己管理能力を養育し、自立を促す機会が必要であると考えています。
※参考『障害者雇用の現状等 平成29年9月20日 厚生労働省職業安定局』
3.偏見と諦め
「レッテル」
人は一人では生きていくことはできません。 しかし、多くの健康な子どもたちは、ダウン症などの知的障がい、自閉症や多動症(ADHD)などの発達障がい、および脳性まひなどの身体障がいのある子どもたちと接する機会がほとんどないまま、社会に出ていきます。 そのため、社会全体が障がいを持つ人々への無理解や偏見を持ちやすい構造になっています。 しかし、私たちピジョンは、彼ら彼女らの純粋さや可能性を日々感じています。 スポーツを通じて人と関わり、自己管理を習慣化することで、障がいのある子どもたちも少しずつ心身ともに成長していく—これは私たちが直接目にしてきた事実です。 この事実が広く認知されることで、障がいの有無にかかわらず、子どもたちが互いに尊重し合い、共に成長できる社会が実現すると信じています。 保護者の皆さまも、諦めずにお子さまの可能性を信じていただきたいと思います。
ミッション
こうした課題から、私たちは次のミッションを掲げることにしました。
障がいのある子どもたちに継続的な居場所と養育機会を提供し、自立を支援すること。
それとともに、社会全体の偏見や無理解を解消すること。
ひいては、障がい者も健常者も共に手を取り合って生きていける社会に変えていくこと。
3つの取り組み
私たちピジョンは、以下の方法で課題解決に取り組んでいきます。
-
- 1. 子どもと保護者のコミュニティと成長の場の提供
- - 継続的な活動を通じて、障がいのある子どもたち、および保護者たちが仲間とつながり、笑顔になり、安心して過ごせるコミュニティを提供します。
- - サッカーを通じて、社会性や自己管理能力を養育し、将来の自立と就労につなげます。
-
- 2. 保護者・学校との連携によるサポート体制
- - 保護者や学校関係者と協力し、障がいのあるお子さまの特性に合わせたサポート体制を築きます。
- - 教育の専門家とも協力し、お子さまの可能性を最大限に引き出します。
-
- 3. 社会との交流と障がいへの理解促進
- 練習や地域活動(またはオンライン発信)を通じて、健常者の障がいへの理解を促します。
- 健常者が交流できる機会を作り、身近な体験から偏見と無理解を解消します。
沿革
- 2011年04月
- 団体設立。「NPO法人えこお」と共に東京都文京区の筑波大学附属大塚特別支援学校で障がい児サッカースクール(教室)の運営・指導を開始
- 2015年04月
- 「NPO法人えこお」から独立し、東京都文京区目白台フットサル場で活動を継続。発足した団体を「アンマリアトーレ ステラ」と命名
- 2018年12月
- 「同仁美登里幼稚園」の休日園庭開放で障がい児が健常児と一緒に活動するサッカー教室を不定期的に活動開始
- 2019年03月
- JFAグラスルーツ推進・賛同パートナー認定を取得
- 2020年02月
- 教室を「Pigeon(ピジョン)」に改名して活動を活発化。サイトとSNSを公開
- 2020年12月
東京大学ア式蹴球部(サッカー部)による支援(文京区における地域支援)が開始
- 2021年10月
- NPO法人化
4人の役員
-
代表理事
武藤 太智
(Muto Taichi) -
日本サッカー協会公認ライセンス取得。 NPO法人ピジョンにて指導方式の策定や指導のフィードバックなど教育を監督。 また、福祉業界に従事する傍ら、幼児・小学生から社会人まで対応のサッカークラブ「アンマリアトーレ」(埼玉県川口市) で監督を兼任中。その他の中学生・高校生チームの監督経験も多数あり。 インタビュー記事はこちら
-
副理事
鈴木 祐揮
(Suzuki Yuuki) -
障害者スポーツ指導員のライセンス取得。 NPO法人ピジョンの教室でコーチのリーダーを務めるとともに、事務局を主管。 サッカークラブ「アンマリアトーレ」にて小学生・幼児の指導経験あり。 本職では営業職に従事。 インタビュー記事はこちら
-
理事
江俣 真人
(Emata Masato) -
事業展開のために本サイトや会員サービスなど仕組みの企画・構築、およびマーケティングの企画・施策を主管。本職ではITエンジニアとして従事。
-
監事
氏森 政利
(Ujimori Masatoshi) -
法的手続きや規約などのアドバイザーとして参画。本職では弁護士(東京弁護士会)として従事。「氏森総合法律事務所」 代表